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08洞爺湖サミット・カギ握る日本

北海道洞爺湖サミットに寄せて「北の国からのエッセイ(13)」 (2008.04.30)
 “洞爺湖サミット”に登る 

このところテレビなどで露出度が高い行楽地といえば、この写真でしょう。サミット関連のニュースのときに常に登場する洞爺湖です。

大噴火した火口に水がたまったカルデラ湖としては屈斜路湖・支笏湖につぐ国内3番目の大きい湖です。支笏洞爺国立公園の一角にあり、同じカルデラ湖でも支笏湖が波の荒い男性的な 湖ならば、洞爺湖は鏡のような女性的な湖でしょう。

アイヌ語でトー・ヤ、湖の岸を意味し、湖畔の壮瞥町出身の相撲協会理事長の四股名は、この湖を意味する 横綱北の湖です。

湖の周囲は43キロ、ほぼフルマラソンの距離に匹敵し、毎年マラソン大会も行われています。この洞爺湖の真ん中に中島があります。おへそ ともいえる中島があるからこそ湖全体がしまり、洞爺湖が美しく見えるのかもしれません。

お腹がのっぺらぼうの蛙より、ショットするたびにおへそが見える宮里 愛のほうが魅力的です。この中島の植物観察をしながら、頂上(サミット)を目指そうと遊覧船で20分、中島に渡りました。 湖岸からみえる中島はお椀のような優雅な小山ですが、近づくにつれ高い山だということに気づきます。

遊歩道はチップが引き詰められて整備されていますが、 山を登る人はほとんどなく、登山道は整備されていません。標高455m、ほぼ直線的に380mほど登るのかと思うと思わず後ずさりです。けど同行者の80%が婦 人の中で、男がリタイアするわけにはいきません。勇気を出して出発、リーダーのお尻にくっつき一列になって登山開始です。
< エゾシカの楽園? >
中島にはエゾシカが生息しています。孤立した島には天敵はいないため繁殖しすぎ、このままでは生態がおかしくなると危惧されています。

自然淘汰を待つに は忍びがたく、かといって国立公園内の動物ですのでそう簡単に手を出せません。

山の面積からして100~150頭が適正規模といわれていますが、現在250頭 ほど生息しているそうです。

とくに冬の間の食料は乏しく、島を歩いてまず目に付くのは、トドマツの幹に付いているエゾシカの歯と爪の跡です。

トドマツの樹皮は 堅く、爪あとは必死に生き抜こうとした証ともいえます。体が小さいのが中島のエゾシカの特徴だということもよく理解できます。
< 特異な植生 >
島の植物は食べ尽くされて、ないのかというと、必ずしもそうではありません。フッキソウの大群落があちこちにあります。(写真左)

フッキソウは常緑の低木で、 冬の間は緑の葉をつけたまま雪に埋れて春を待ちます。今がちょうど花の時期です。花はそれほどきれいではありませんが、漢字で富貴草と書きます。

名前負けしているような地味な植物ですが、秋になると真珠のような白い実をつけます。シカはなぜフッキソウを食べないのだろう。

もうひとつ、ハンゴンソウの葉が目立ちます。(写真右)

秋に黄色い花をつけますが、この時期は葉が出たばかりで柔らかい葉が風に揺れています。

葉の切れ込みが深いため手招きするように見え 、死者の魂を呼び戻す意味の「反魂」がハンゴンソウの由来です。私には幽霊が手招きしているように見え、ハンゴンソウを見つけるといつも「うらめしや~」と言 っています。

けどこの時期、いかにもおいしそうなハンゴンソウです。若葉は山菜になり、灰汁抜きをして酢味噌和えにするとおいしいのに、なぜエゾシカは食べ ないのだろう。地元の自然愛好家に聞くと、フッキソウ・ハンゴンソウともシカが食べると消化不良となって体をこわすそうです。

エゾシカは本能的か、一度は下痢をしてひどい目にあったのか、これらの植物に決して手を出そうとしないそうです。反面、北海道のどこにでもあるササが中島にはほとんどありません。また、この時期、徐々に大きくなるフキも中島には見られません。

ササとフキはシカの大好物だそうです。エゾシカにとって嫌いな植物が繁茂し、大好きな植物は食べつくされている・・・中島は他には余り見られない植生となっています。
< 頂上で歓迎するキタコブシ >
登山道があるようでないような細い道をふんばって歩きます。

途中倒木が道をふさぎます。北大のポプラ並木が倒れた4年前の台風18号の被害がここでは、ま だそのままとなっています。時には倒木をまたぎ、時には倒木の下をくぐって登っていきます。

異性同士でもここでは手を差し出すと、自然に手を取り合って支えあいます。エゾシカのフンを見つけました。黒いパチンコ玉のようです。踏みつけないようにまたいで歩きます。

ちょっと休んで近くの木々を見ますと、紅色の若葉 が目立ちます。シウリザクラです。

まだ木々の葉が出そろってない春のこの時期、紅い葉がとても目立つサクラの木です。 ただ、花の時期は遅い上、サクラとは思えない試験管を洗うブラシのような白い花をたくさんつけます。

山を登り始めておよそ1時間半、ようやく頂上に到着です。 猫の額のような頂上です。 頂上より高くキタコブシの木が生えており、ちょうど満開です。(写真右) 趣のある頂上です。
< 無粋な春霞 >
周囲を見渡すと360度眺望がきくはずですが、この日は残念ながら春霞です。 蝦夷富士と言われる羊蹄山は全く見られません。

それどころか、湖畔のサミットが開かれるザ・ウインザーホテル洞爺の威容もかすんでいます。 「サミット会場は見える」と聞いてる人がいます。 「サミットはここだよ」 どっと笑いが起きます。

湖畔でもサミット会場のホテルはかすんおり、頂上に登ればもっとよく見えるだろうと思っていましたが、むしろ逆、まだ湖畔の方がかすかに見えました。(写真 左)

もし眺望がきいたとき、洞爺湖畔に集まった各国首脳はどんな風景を見るのでしょうか。 6年前の平成14年、当地で囲碁界の序列ナンバーワンを決めるビッグ対局がありました。 この対局は途中トラブルが発生して中断し、囲碁史上に残る対局となりました。

そんな勝負師の生々しい盤上をよそに、この日の洞爺湖は年に数回しかないとホテルの女将がいうほど晴れ渡っていました。(写真)

あずま路の
富士の姿に 似たるかな
雲にそびゆる 後志羊蹄の山

明治天皇についで偉かった太政大臣三条実美が、初めて北海道を視察したとき歌いました。

以来羊蹄山は蝦夷富士と言われています。 このすばらしき環境のもと、7月に開催されるサミットでは、地球環境史上特記すべき妙手が出ることを願いたいものです。

(寄稿=望田武司)

望田武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。



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