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Home > 政治 > 08洞爺湖サミット・カギ握る日本 > 北の国からのエッセイ

08洞爺湖サミット・カギ握る日本

北海道洞爺湖サミットに寄せて「北の国からのエッセイ(18)」 (2008.05.29)
 新緑の中の滝しぶき 

5月も末になりますと、一部の芽出しの遅い木を除いて、大半の広葉樹は若々しい葉をつけ始めます。それが太陽の光に照らされると、まばゆいばかりでさわやかさを感じます。気温は15度前後と暑くもなし、寒くもなし、今週はいつもと違った札幌郊外の森に出かけてきました。
< 国設公園 >
地下鉄南北線の南の終点、真駒内駅からさらにバスで30分、滝野すずらん丘陵公園に着きます。(写真右)

一見かわいらしい名前の公園ですが、東京ドームが84個も入るとてつもなくでかい公園です。

隣接する地域はゴルフ場と自衛隊演習場で、広さでは遜色なくスケールが大きい公園です。言ってみれば山の中の公園でしょうか。それでも札幌市内です。

札幌市の面積は合併して大きくなったいわき市、静岡市についで3番目だと聞いていましたが、その後の平成の大合併などでどうなったでしょうか。この公園は国設公園です。あまり聞きなれない用語ですが、国が建設した公園で、道内では唯一つ、国内でもそれほど多くないということです。

渓流を歩きますと、柔らかそうなアキタブキが繁茂しています。

「おいしそうだねえ。山菜採りでもしようか」
「だめだよ。ここは国立公園だよ」
「違うよ。国が作った公園だけど、自然保護法で言う国立公園ではないよ。だから採ってもいいんだよ」
「そうだそうだ」

漫才のようなやり取りをしながらも、誰も採ろうとしません。もともと、山菜採りが目的でないために誰もナイフを持ってきていないのです。おまけに、自然保護にうるさい先生もいます。
< 自然の中で作られた公園 >
公園は山の中でもきれいに整備されています。歩道は広く足に負担のかからない造りになっています。

芝生もきれいに刈られている上ゴミ一つ落ちてなく、作業員が保守に努めています。その限りではとても快適です。散策路の左右にはいろいろな植物が生えています。

スズランが咲いていました。

よくみるとかわいらしい鈴のような花が、葉より上にでています。

「先生、このスズランはドイツスズランではありませんか」
「そうです」

自生のスズランは葉の下にひっそりと咲いています。目立ちません。君影草といわれる由縁です。これに対し、ドイツスズランは花を大きく見せようとした園芸植物です。

ミズバショウは既に終わって、大きな芭蕉の葉が密生していました。これも不自然です。自然の中のミズバショウはまばらです。規則正しく同じ大きさで密生することはありません。皆植えたものです。

「自然の奥深い山に来て、人工の植物を見るのもおかしいねえ」
「自然を壊して作り直しているのが国の公園なんだよ。お金が一杯あるんだから」

確かに歩道脇の高木も整然と植えられており、一旦伐採したあと改めて植樹したことがはっきりわかります。国設公園は旧建設省所管です。

「もしかしたら、ガソリン税のお金がこちらに回ってきてるんじゃないの」
「そうかもしれないね」

たわいない話の中にも世相が反映されます。
< 滝めぐり >
植物は植え直しができても、自然の造形はできません。渓流伝いに歩きますとごう音が耳に入り、大きな滝に出会いました。

アシリベツの滝です。

高さ26m、幅50mにわたって大きくえぐられた断崖から水が勢いよく落ちています。地形の関係でしょうか、滝の高さ以上のスケールのでかさを感じさせます。

「日本の滝100選」にも選ばれており、冬は結氷して自然の氷芸術を見せてくれます。新緑の合間から柔らかい陽の光が放射線状になって注ぎ、この光に水しぶきがかかってきらきら光ります。

この丘陵には滝があちこちにあり、地名が滝野というのもわかります。

鱒見の滝です。

落差18m、上ってきたマスがこれ以上のぼれず、滝を見上げたという伝説からこの名がついたそうです。アシリベツの滝が男性的なら、こちらは女性的です。

滝野にある滝には、滝壷がありません。支笏火山の火山灰で出来た柔らかい岩盤のため、硬い岩盤に何万年もかけて穴を開けるような滝壷はできないそうです。

多くのアマチュアカメラマンが三脚を立てて、新緑の中の滝を撮っていました。歩道脇に鮮やかな赤い花が見ごろの植物に出会いました。クリンソウです。九輪草と書き、階層ごとに段咲きする姿を仏塔の屋根にある「九輪」に見たてました。けど実際には9段が出来るクリンソウは見たことがありません。

九輪草 四五輪草で しまひけり

小林一茶の歌です。

すずめの子 そこのけそこのけ お馬が通る

この歌に見られるように、一茶は深い眼差しをもって生き物に接した俳人だと昔教わりました。

しかし、クリンソウの歌を知ると、縁側でのんびり座っている一茶にとって生き物観察は、暇つぶしの対象だったのかも知れないと思ってしまいます。

何しろテレビも何もない時代です。自然が一番の遊び相手だったのでしょう。余りの鮮やかなクリンソウ、これも自生ではないことが一目でわかります。

しばらく行くともう一つの滝、不老の滝に出会いました。落石の恐れで整備中のため立ち入り禁止となっており、遠めで眺めるしかありません。遠めで見る滝もまた良いものです。

滝野すずらん丘陵公園の総面積は395.7ヘクタールです。そのうち現在供用開始になっているのはまだ半分弱です。これから整備する予算は40億円だということです。

さらにこれほどまでの大金を注いで自然鑑賞のために、自然を改造する必要はあるのでしょうか。これこそ無駄遣いではないか。環境美化と国民のレクレーション施設作りに名を借りた自然破壊とも言えないこともありません。

自然観察にふさわしくないことを感ずる社会観察となりました。

(寄稿=望田武司)

望田武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。



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