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Home > 政治 > 08洞爺湖サミット・カギ握る日本 > 北の国からのエッセイ

08洞爺湖サミット・カギ握る日本

北海道洞爺湖サミットに寄せて「北の国からのエッセイ(20)」 (2008.06.10)
 支笏湖の初夏 

季節の移り変わりは早いものです。つい一ヶ月前にはまだ残雪があって芽が吹き出したばかりの植物も、今や新緑に覆われ、活発に光合成して生長する一番の活動期です。原生林に囲まれた支笏湖に、ことし初めて足を伸ばしてきました。
< 太古のたたずまい >
支笏湖美笛(びふえ)地区です。(写真)

ちょうど支笏湖温泉街の対岸に位置し、付近にキャンプ場があります。温泉街ではありませんのでひっそりとしています。

湖畔に大きな流木が横たわっていました。倒木が湖に注ぐ美笛川から流されてきたということです。

この倒木は、いずれはどこかに流されるのでしょう。 そのためには相当水位が上がらなければならない。

倒木は波に洗われてツルツルになっていますが、だいぶ前から同じところに横たわっているということです。原始のたたずまいをみせる支笏湖を象徴する絶好の撮影ポイントとなっていました。(正面は恵庭岳)
< カルデラ湖 >

支笏湖は周囲42km、周辺は
恵庭岳(1320m)
風不死岳(ふっぷしだけ:1102m)
樽前山(1023m)などに囲まれ、緑豊かな原生林が広がっています。

水深は360mと日本で2番目に深く、冬は凍結しない最北の不凍湖です。この湖が火山の爆発で出来たカルデラ湖ということは、この火山がどれくらい大きな火山だったのでしょう。

このような資料があります。研究者の指導をもとに、札幌市博物館活動センターが作成しました。大昔に支笏火山という山があり、3万年から4万年前大噴火を起こしました。

その山すその一片が、今の1000mを越す恵庭岳であり、風不死岳でした。この2つの山を裾として結んだ山が支笏火山で、もし富士山型の山だったら5000mをはるかに越える大火山だったことになります。それが爆発で山体崩壊をおこし、ぽっかりあいた噴火口が今の支笏湖です。

この支笏火山の大噴火は北海道中央部の地形を一変させました。大雪山を源として、上川・空知平野を流れる大河石狩川は、噴火の前は今の苫小牧付近の太平洋側に注がれていました。ところが支笏火山の大噴火でふさがれてしまい、行き場を失った石狩川は今の小樽に近い日本海側に注がれ、今日に至っているということです。

おびただしい量の火山灰が千歳から札幌方面に降り注ぎました。火山灰は長い年月で圧縮されて石(溶結凝灰岩)となりましたが、明治初期、お雇い外国人としてアメリカから迎えられた地質学者によって発見されました。いわゆる札幌軟石で、寒冷地の格好の建材として大量に採掘され、札幌の建設に大きく寄与しました。

札幌に石山通りとか、石山という地名が古くから残っており、当時の賑わいが偲ばれます。傑作は大正15年に完成した旧札幌控訴院(いまの札幌資料館:写真)で、石造りのシックな建築物は国の登録指定文化財になっています。

< ベニバナイチヤクソウ >

太古の時代の地殻変動にロマンを感じながら歩いていると、湖畔まで迫ってきた森の林床に、小さな赤い花を見けました。ベニバナイチヤクソウです。

赤いスズランのような花を見つけると、誰もがカメラに収めたくなります。高山性の植物ですが、緯度の高い北海道では平地でも観察されます。

名前のように薬として活用されていましたが、効能はたくさんあるのにイチヤクソウ(一薬草)とはこれいかに、といつも思っています。

ちょっと歩きますと、この花の大群落に出会いました。見渡す限りのベニバナイチヤクソウです。初めて見た群生です。

最初は目を見張りましたが、次第に気持ちが萎えてきました。ベニバナイチヤクソウは、やはり1~2本林床に咲いているところに趣があります。これでもかこれでもかと見せ付けられると興が冷めてきます。

< チップ漁解禁 >

6月に入って支笏湖は名物ヒメマスが解禁です。地元ではチップ釣りといってます。

早朝一斉に舟を出して大公望が釣り糸を垂れます。チップは回流しますので、入れ食いか坊主か、どちらかの傾向が強いそうです。

この日は早朝出た舟は既に休んでいましたが、湖の中に腰まで浸かって竿をじっと持っている釣り人が、一人いました。

「釣れるかな」

私も木の株に腰掛けて、じっと見ていました。10分以上経っても一度も竿を上げませんでした。痺れを切らしてその場を去りました。

< 森の精気 >

支笏湖畔の近くの樽前山麓に北大苫小牧研究林があります。

去年、天皇皇后両陛下も視察されました。広大な原生林の中にあり、「クマに注意」の立て看板が目立ちます。

研究のため植えた樹は、幹の地面から2mくらいまでネットで張られており、エゾシカの食害を防いでいます。せせらぎの中の新緑はすばらしく、大きく深呼吸したくなります。まさに森林浴です。

「フィトンチッド」という言葉を耳にしませんでしょうか。知りあいの森林インストラクターと森を歩くと、しきりに「フィトンチッド」という言葉がでてきます。

余り聞いたことのない言葉だなと思い、聞き流していました。するとつい数日前、偶然ですが、かわいい気象予報士がテレビでフィトンチッドの話しをしていました。そんなポピュラーな言葉かと思ってじっと聞き入りました。緑豊かな森の中に入ると、さわやかな空気が広がり、かすかな香りに気がつきます。

植物が自ら作り出して発散しているこの香りの正体を「フィトンチッド」といい、この香りを浴びることを森林浴というようです。フィトンチッドは体をリフレッシュさせるだけではないようです。抗菌・防虫・消臭などのいろいろな働きがあるそうで、ただの木の香りだけではありません。

森には神秘的な力があり、その働きをもつフィトンチッドは森林の精気の素ともいえると結んでいました。この数年、暇さえあれば森の中を歩いています。知らず知らずのうちにフィトンチッドを浴びていたのでしょうか。もしかしたら老後の精気もフィトンチッドからもらっていたのかもしれません。

北大苫小牧研究林の中を流れる清水は、苫小牧の水源になっているそうで、ゆったりとながれていました。

(寄稿=望田武司)

望田武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。



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