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Home > 政治 > 08洞爺湖サミット・カギ握る日本 > 北の国からのエッセイ

08洞爺湖サミット・カギ握る日本

北海道洞爺湖サミットに寄せて「北の国からのエッセイ(21)」 (2008.06.16)
 らん学事始 

梅雨のない北海道です。6月も半ばに入りますと札幌は暑くもなし寒くもなし、湿度も低く一年で一番さわやかな季節です。森の緑も一段と色濃くなってきました。鳥の鳴き声もセミの声に消されてよく聞こえず、探鳥会としてはもっとも不適な時期です。その一方で、この時期は繁殖の時期でもあります。条件がよければ珍しい鳥を見ることが出来ます。
< 誕生した森の人気者 >
木の枝に仲良く止まっているのはエゾフクロウです。生まれたばかりでまだヨチヨチ歩き、うまく飛ぶことが出来ません。

せいぜい隣の木に移るか、枝を行き来して、親鳥が餌を持って戻ってくるのをじっと待っています。夏になると次第に大きくなった広葉樹の葉に遮られて、フクロウの姿を捉えることが難しくなります。

ところが、この写真は4羽ともバッチリではありませんか。 実はこの写真、自然観察仲間の女性から「撮ったわよ」弾んだ息遣いの聞こえるメールで送られてきたものです。

私も数日前から通っていましたが、こんなに格好良く撮れませんでした。撮れてもせいぜい3羽、しかもお尻を向けていました。

彼女は毎日、朝早くから地下鉄とバスを乗り継いで1時間以上かけて通い、ついにすばらしいシャッターチャンスをモノにしました。執念のひとことです。家事をきちんとやっているのか、今度聞いてみようかと思います。
< 人気のラン科植物 >

この時期、目を光らすのは木の上ばかりではありません。木の下、林床部でも素晴らしいものが観察されます。

コケイランです(写真下左) この森では比較的ポピュラーなラン科の植物です。
サイハイランです(写真下右) 花の姿が軍師が采配をふるう軍杯のように見えます。



クゲヌマランです(写真右)

白くて可憐な花です。神奈川県鵠沼で最初に見つかったことから、この名がつけらたということです。

「あら ランだわ」

一人が見つけると一斉に目が注がれます。ランというと、皆さん目をらんらんと輝かせます。ラン科の花びらは6枚(がく3枚、花弁3枚)ですが、それぞれの形が異なっていて左右対称に見えます。

このうちの内側の花びらの一枚がとくに変わっており、唇弁(しんべん)といわれています。虫が着地しやすいように袋状になっているもの、掌をすぼめたもの、襞があるものなど唇弁はさまざまです。

このようにラン科の花はそれぞれ個性を持った花をつけており、愛好家にとってはたまらないのでしょう。また、ランは子葉が一枚の単子葉植物の中では進化の頂点にあり、さらに進化を続けているというのも魅力あるところです。
< シランもラン >

「これランじゃない?なんと言うランかしら」声をかけられると「知らん」。

親父ギャグを飛ばして笑いを誘ったと思ったら、「『シラン』というランもあるよね」という言葉が返ってきました。ギクリ! 図鑑を見ると確かにあります。「シランというランも知らんかった」

2年ほど前のできごとです。シランは比較的ポピュラーだということですが、チャンスがないとなかなかお目にかかれません。先日ようやく対面することが出来ました。(写真左:6.7)場所は北大植物園です。

花はまだつぼみでしたが、知ることが出来てようやく安心しました。ちなみに名前に「ラン」がついていても、ランでないものもあります。スズラン(ユリ科)サフラン(アヤメ科)ヤナギラン(アカバナ科)などです。

< 洋ランと野草のラン >

魅力あるランはどんどん品種改良されて、相当な種類に達しているようです。「洋ラン」といわれているものです。目的が鑑賞用であるため、花は大きくて色鮮やかです。

それはそれなりに見事ですが、ランはやはり林床にひっそり咲く野草のランが一番です。この日は他にもランを見つけることが出来ました。

ノビネチドリです(写真右)
根が横に伸び、薄紫の小さな花が密についています。縦にすじ状の葉脈が目立ち、葉の縁がフリルのように波打っています。

サルネンエビネです(写真下左)
唇弁は3裂してサルの顔よろしく赤茶色をしており、昔からよく知られているランです。

ユウシュンランです(写真下右)
若くして亡くなった植物学者、工藤祐舜博士の功績をたたえて名づけられました。この日は半日森を歩いただけで、上下6つのランを観察でき、大満足でした。とくにユウシュンラン(絶滅危惧種)は、初めて観察しました。

< 盗掘 >

先月末、礼文島で自生のレブンアツモリソウが盗掘されました。

15株咲いていた花のうち5株が盗掘され、警察では自然保護法違反で捜査を始めたと、テレビ・新聞で一斉に報道されました。

レブンアツモリソウが盗掘されたのは8年ぶりだそうです。レブンアツモリソウは礼文島にしか生えていないランで、国の特定稀少野生植物に指定されて特別に保護されています。

自生地には有刺鉄線が張られ、監視員が常時見張る一方、夜は盗掘を防ぐためライトアップされています。私は数ある野生のランのうち、レブンアツモリソウが最高の傑作だと思っています。

一昨年礼文島を訪れたとき、ふっくらとした花との対面に感激するとともに、VIP並みの保護にびっくりしたものです。(写真:6.5.30)

東京から花の島・礼文島に住み着いて十数年、エッセイストの杣田美野里さんは、レブンアツモリソウを次のように書いています。

保護柵越しでしかこの花に対面できないのは悲しいことです。
レブンアツモリソウも大自然の中で、のびのびと野生の表情を見せたいことでしょう。
盗掘を恐れながら咲いたアツモリソウの姿は、一滴の涙にみえます。


めずらしい、きれいだと思うと、持って帰りたいという衝動に駆られるようです。けど、これらの高山植物や冷温帯の植物は、マイホームの狭い庭に植えてもまず育ちません。結局は自分のものにしたいという一時的な自己満足にすぎません。

自然観察に訪れる人に 「これが○○ランですよ、と案内すると1週間後にはなくなっている、ランを教えていいものかどうかいつも悩んでいるんですよ」ベテランの自然ガイドのつぶやきです。

自然保護・環境保全が求められていますが、漠然とした理解ではなく、一人ひとりの具体的行動が大切だと強く感じます。

(寄稿=望田武司)

望田武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。



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