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Home > 政治 > 08洞爺湖サミット・カギ握る日本 > 北の国からのエッセイ

08洞爺湖サミット・カギ握る日本

北海道洞爺湖サミットに寄せて「北の国からのエッセイ(24)」 (2008.0702)
 道北の孤島 天売・焼尻島(中) 

天売島は焼尻島から船で10数分、焼尻島よりやや大きいが、ほぼ同じくらいの島である。ところが島の景観、とくに海岸線は全く異なり、天売島の西側は断崖絶壁が続く。天売島の目玉は、この島にしか生息していないオロロン鳥(ウミガラス)だ。

< 絶滅防止への挑戦 >

40年以上前、天売島を訪れたことがある。赤岩という壁のような大きな岩があったが、実際には真っ白だったことをよく覚えている。オロロン鳥のフンで白く塗りつぶされていたのだ。

当時無数にいたオロロン鳥は、今日では絶滅寸前の幻の鳥になりつつあるという。

現在、環境省がデコイといわれる模型を岩に設置し、それに「オロロ・・・」という鳴き声を加えた結果、本物のオロロン鳥が飛来し、オロロン鳥復活に成功したという。

ただ、一般の人が観察できるのは難しい。わずかにフェリーが入港する岸壁で、観光客を歓迎する大きなオロロン鳥の像で、その姿を偲ぶことができるに過ぎない。

< 海鳥の天国 天売島 >

オロロン鳥は絶滅寸前でも、天売島は海鳥の天国である。ウトウやケイマフリ、ウミウ、オオセグロカモメなど数種類の海鳥が100万羽も生息しているという。

訪れたとき一時ガス(濃霧)がかかって、肝心の場所でその数の多さを目にすることはできなかったが、鳴き声の共鳴に脅威すら感じた。(写真:多くはウミウ)

圧巻はウトウとウミネコの戦いだった。天売島は、ウトウが60万羽も生息している世界最大のコロニー、繁殖地である。

繁殖期の6月から7月にかけては、岩壁から見物客の足元のイタドリの砂地にいたるまで無数の巣穴を作る。

昼間、海上で過ごしたウトウは、夕方になって巣の中にいるヒナのために、小魚を口にくわえて巣穴に戻ってくる。その巣穴の前には、小魚を虎視眈々と狙うウミネコが待っている。(写真右)

えさの争奪戦は壮絶ではあるが、あっという間に終わり、ウトウが負けてえさをとられてしまう。



ヒナのためのえさを横取りするウミネコはけしからんとばかり、見物客はウトウが戻ってくると「早く(巣穴に)入れ」「あっ、そこにはウミネコが待っている」声を上げてウトウを応援している。

たまたま、隣に北大の研究生がいた。えさをどちらが獲るか、カウント調査している。

「なぜウトウは強く抵抗しないのか」
「体が小さく負けるのがわかっているから」
「昼間はえさを運ばないのか」
「昼間は明るくて狙われるので、薄暮になってからウトウは戻ってくる」
「ウミネコはなぜ自分でえさをとらないのか」
「昼はとってるけど、夕方はウトウの小魚を横取りするほうが楽で確実だから」

矢継ぎ早の質問に対して、この研究生は丁寧に答えてくれる。

鳥の動きはすばしこい。あちこちで争奪戦が行われているので、質問に答えてくれる余裕はないと思われるけど、ペンは一応動かして、鳥の動きをチェックしている。

丁寧に答えてくれればくれるほど、皮肉にもいい加減な調査をしているように思えた。(写真:えさをとられて呆然としているウトウ)

「えさをとられた親鳥は、もう一度えさを探しに行くのか」と尋ねると、「それはしない、一日一回だ」という。それならヒナは育たないのではないかと、たたみ掛けると、「それは大丈夫、夫婦でえさを運んでいるので、どちらかがえさを与えるだろう」という。。

ウトウはつがいになると、生涯連れ添い、離婚も浮気もしないという。その話を聞いて、隣の独身のご婦人の顔を見た。

無表情だった。詮索はよそう。

ウトウの性格が反映しているのだろうか、ウトウは漢字で「善知鳥」と書くという。

また、ウミネコにえさを横取りされても、ヒナの成長率は70%はあるという。逆にウミネコにえさをとられず、100%成長するとすると途方もないウトウの数になると思った。

研究生はさらに付け加えた。「ここではウミネコが悪者になっているけど、ウミネコにもヒナを育てている巣穴がある。その巣穴は他の動物に狙われている」その動物は?と尋ねると、人間が手放しにしたため野生化したネコとカラスだという。

薄暮の午後7時から、日が沈む8時までのわずか1時間であった。

夕暮れの上、動きが早いため、残念ながら私のカメラ技術では、決定的な瞬間をうまく捉えることはできなかった。

しかし目の前で繰り広げられた大自然のドラマを見て、少し血圧があがってきた感じがした。天売島は国指定の天然記念物、海鳥繁殖地に指定されているという。(つづく)

(寄稿=望田武司)

望田武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。



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