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北海道洞爺湖サミットに寄せて「北の国からのエッセイ(6)」 (2008.03.17)
春の足音
| 本州では早くも今年のサクラの開花予想が発表されました。予想よりちょっと早めだそうで、あと10日もすると日本列島は西からサクラの便りが聞かれそうです。春の遅い北海道からはまだ色香の漂う便りはお伝えできませんが、3月ももう半ばです。春を求めて週末の15日、札幌郊外の野幌の森に行ってきました。 |
森はまだ一面の銀世界です。ただ踏みしめる雪道は柔らかく、人が通った細い道を外れますと長靴が沈み、時々膝まで入ってしまいます。 地形がV字型となる沢では、水が流れていました。冬の間雪に埋まっていた川が、細いながらも姿を現しました。周囲の積雪はまだ70cmほどあります。冷たそうですが、水の柔らかさをみると、春がもうすぐだと感じます。 雪道に沿って面白い現象に出会いました。雪が規則正しく浮き上がっていました。まるで白い浮き島のようです。 |
普通歩いた跡は雪が沈みます。ところが歩いた跡が逆に高くなっているではありませんか。なぜだろう。雪が溶けだしますと柔らかい雪は早く沈むのに対し、踏み固められたスノーシューの雪の溶け方が遅いために、逆に浮き上がるのだそうです。 気温の上昇の激しい春先に見られる自然現象だそうで初めて観察しました。新しいものを見つけるとすぐ感激です。 |
樹皮がはがれた木に大きな穴がいくつも開いていました。キツツキの仲間では最大のクマゲラの食痕です。樹の回りには、クマゲラが削り取った木屑が一杯落ちています。 警戒心の強いクマゲラの食痕がこのような低いところにあるのは珍しいことです。よほどおいしい虫が一杯いたのでしょう。しかも木屑はとても新しい。穴を掘って3日もたってないことを示しています。もしかすると今朝かもしれない。 耳をすますと、トントントントン、クマゲラのドラミングが聞こえます。この付近に間違いなくクマゲラはいる。 |
ドラミングは繁殖期に入ったオスが樹を叩いて「この辺一体はおいらの縄張りだよ、他のオスは入っちゃだめだよ」という意思表示です。まさに春を迎えて色気がついたことを表現しています。 「おいらもクマゲラになりたい」と言ったら、一列に並んで歩いている圧倒的に多い淑女から笑いと軽蔑の眼差しです・・・。写真は去年3月同じ野幌の森で撮影できたクマゲラです。トドマツの大木の相当上のところで巣を作っていました。せっせと突いては木屑を飛ばしている瞬間です。 クマゲラは北海道と東北の白神山地にしか生息していない貴重な天然記念物です。 |
雪の上には、タネや折れた枝などがいろいろ落ちています。ふだん見ることの出来ない高木の先端を観察できます。 森を見上げますと、鳥の巣のようなものがあちこちにあります。巣ではなくヤドリギです。木から養分をもらって生きている寄生植物です。こうした森の産物を見て歩くのも楽しみの一つです。 ヤドリギは赤や黄色の実をたくさんつけ、鳥の大好物です。ただタネは糞と一緒にだし、その粘り気のあるフンが樹にくっついてそこからまたヤドリギが寄生して生長します。 |
根開き(ねあき)といわれており、太陽の光が樹に注がれる輻射熱によって、根元の雪がいち早く溶ける現象です。日中の時間が長くなり、太陽光も次第に強くなったことを示しており、この穴はこれからますます大きく深くなります。 この写真には偶然ほぼ一直線の足跡が写っています。キタキツネです。このおしとやかな歩き方は肩幅のないキタキツネの特徴です。 |
久しぶりに歩いた野幌の森には春の兆しがいろいろ観察されました。 雪がしまっていると1時間ちょっとで歩けるコースが、雪が柔らかいために2倍近い時間がかかります。「ああよく歩いたなあ」 上を見上げますと、この日一番の春を見つけました。エゾノバッコヤナギです。真っ白な毛をつけて芽吹いていました。よく見ると、芽に氷がついています。まだ小さいですがバッコヤナギはネコヤナギの数倍の大きな花をつけます。 札幌の一日の平均気温は、先週ようやくプラスに転じました。植物が目覚めて活動を始めるのは、5度を上回ってからといわれています。去年平均気温が5度を超えたのは4月6日でした。あと20日間ほどかかります。 けどこのところ暖かい日が続いています。あと2週間もすれば南斜面からはフクジュソウやフキノトウが顔を出すかもしれません。雪はまだ深くても、北国の春はすぐ近くまできています。 |
(寄稿=望田 武司)
望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
























